GRヤリスと86を選ぶ前に知っておきたい基礎情報

GRヤリスとはどんな車か？基本スペックと開発背景

GRヤリスは、WRC（世界ラリー選手権）の技術を反映して開発された本格派のスポーツカーです。1.6L 直列3気筒ターボエンジンを搭載し、最高出力272馬力というクラスを超えたスペックを誇ります。開発にはTOYOTA GAZOO Racingが全面協力し、ラリーで培ったノウハウが詰め込まれています。

車体構造も専用の「GR-FOUR」プラットフォームを採用しており、剛性の高さと軽量化を両立。コンパクトでありながら高い走行性能を発揮することが可能です。

トヨタ86とは？歴史とコンセプトの違い

トヨタ86は「運転の楽しさ」を追求したFRスポーツカーです。初代は2012年に登場し、2021年にはGR86としてフルモデルチェンジ。水平対向エンジンと後輪駆動の組み合わせにより、軽快なハンドリングが特徴です。

86はスピードよりもドライビングの質を重視した設計で、日常使いも視野に入れたバランス型のスポーツカーです。

両モデルのターゲットユーザー層とは？

GRヤリスは、競技志向やハイパフォーマンスを求める層に人気があります。一方で、トヨタ86は「運転が好き」「走りを楽しみたい」というライトユーザーにも支持されています。

• GRヤリス：30〜40代のスポーツカー経験者が中心
• 86：20〜30代の若年層やスポーツカー初心者が多い

それぞれの特性が、ユーザー層に明確な違いを生んでいます。

GRヤリスと86の販売価格帯とグレード構成

走行性能の比較：GRヤリスと86はどちらがスポーツカーとして優れている？

エンジン性能の違い（馬力・トルク）

GRヤリスは1.6Lターボで272馬力、86は2.4L自然吸気で235馬力という違いがあります。最大トルクもGRヤリスが370Nmに対し、86は250Nmにとどまります。

出力のピーク回転数にも差があり、GRヤリスは低回転からトルクを発揮しやすく、街乗りからサーキットまで幅広く対応可能です。

「加速の鋭さ」を重視するならGRヤリス、「エンジンフィールの楽しさ」を求めるなら86が向いています。

駆動方式（4WDとFR）の違いと走りへの影響

GRヤリスは独自の4WDシステム「GR-FOUR」を搭載し、前後トルク配分を3モードから選択可能です。一方、86はFRレイアウトで、リニアなハンドリングとドリフト性能が魅力です。

• GRヤリス：トラクション重視、濡れた路面や雪道に強い
• 86：軽快な旋回性とカウンター操作が楽しめる

どちらを選ぶかは「安定志向」か「操る楽しさ重視」かによって変わります。

加速性能とサーキット評価の比較

0-100km/h加速では、GRヤリスが約5.3秒、GR86は約6.3秒と1秒以上の差があります。実際に富士スピードウェイなどのテストでも、GRヤリスの方が1周あたり2〜3秒速いという結果が出ています。

「ラップタイムを競うならGRヤリス一択」という評価が多く、特にRZハイパフォーマンスモデルはサーキット向きです。

ただし、86はタイムよりもコーナリングの気持ち良さを評価する声が目立ちます。

シャシー・サスペンション構造の違い

GRヤリスはフロントにマクファーソンストラット、リアにダブルウィッシュボーンを採用し、剛性とトラクションを両立した構造です。対して、86は前後ともマクファーソン＋ダブルウィッシュボーンですが、バランス重視の設計です。

シャシー剛性に関しては、GRヤリスの方がねじり剛性が高く、特に高速域での安定感に優れます。86は柔軟性があり、乗り手の操作に素直に反応するのが特長です。

実際のオーナーによる走行フィーリングの声

GRヤリスのオーナーからは「高いスピードでも不安感がない」「峠道でも安心して攻められる」といった声が多く聞かれます。一方で、86のオーナーは「運転が楽しくて、つい遠回りしたくなる」「FRの動きが学べて運転が上達する」と評価しています。

• GRヤリス：安定性と速さを重視する人に好評
• 86：車との一体感を求める人に支持

「どちらが速いか」だけでなく「どちらが楽しいか」も選ぶポイントです。

日常使いと快適性の比較：どちらが普段使いに向いているか？

燃費性能と実燃費の違い

カタログ燃費では、GRヤリスのWLTCモード燃費は13.6km/L、GR86は11.7km/Lです。ただし、実燃費ではGR86の方が安定しており、街乗りで約10〜12km/L、高速では14km/L前後が期待できます。

一方、GRヤリスはターボエンジンと4WDの影響で、街乗りで8〜10km/L前後、高速でも12km/Lに届かない場合があります。

燃費重視なら、自然吸気で負荷が少ないGR86の方が有利です。

乗り心地と静粛性の比較

乗り心地はGR86がやや快適で、日常利用に適したセッティングになっています。サスペンションがしなやかで、段差や路面の凹凸を比較的スムーズに吸収します。

GRヤリスはスポーツ走行を意識した固めの足回りで、路面の情報をしっかり伝えてくれますが、長時間の移動ではやや疲労感が出ることもあります。

静粛性もGR86が上。タイヤノイズやエンジン音の遮音性に差があり、長距離移動での快適性に差が出ます。

インテリアの快適性・収納性

室内の広さは大差ありませんが、収納スペースではGRヤリスが優勢です。リアシートを倒すと荷室容量が大幅に増え、大きな荷物や旅行用バッグも積載可能です。

一方、GR86はラゲッジスペースが狭く、ゴルフバッグやキャンプ用品の積載は工夫が必要です。日常の買い物程度なら問題ありませんが、積載性には限界があります。

• GRヤリス：ハッチバック型で使いやすい荷室
• GR86：2ドアクーペゆえに積載性は控えめ

安全性能と先進装備の差

GRヤリスは「Toyota Safety Sense」を搭載し、プリクラッシュセーフティ・全車速ACC・車線逸脱警報などが標準装備されています。

GR86も同様の安全機能を備えていますが、6MT車では一部機能が制限される場合があります。特に全車速追従のアダプティブクルーズコントロールはAT車のみの搭載となります。

運転支援装備の充実度を重視するなら、AT仕様のGRヤリスが安心です。

通勤・買い物など日常使いでの利便性

通勤や日常使いでは、GRヤリスの取り回しや見切りの良さが高く評価されています。全長も短く、最小回転半径も5.3mと小回りが利くため、都市部での走行や狭い駐車場でも扱いやすいです。

GR86は全高が低いため、乗り降りや視界に制限があります。クーペ特有の不便さがあり、毎日の足としては慣れが必要です。

そのため、「日常×スポーツ」を両立させたいならGRヤリス、「非日常を楽しみたい」ならGR86がおすすめです。

維持費の比較：GRヤリスと86ではどれくらい差がある？

自動車税・重量税・保険料の違い

GRヤリスと86は排気量が異なるため、自動車税にも違いがあります。GRヤリス（1.6L）は34,500円、86（2.4L）は39,500円です。

重量税は車両重量によって変わり、GRヤリス（約1,280kg）は年間約12,300円、86（約1,270kg）も同水準です。任意保険料は、年齢や等級によって異なりますが、GRヤリスの方がスポーツグレード扱いになりやすく高額傾向です。

20代・等級15・年間1万kmの条件では、GRヤリスが約100,000円、GR86が約80,000円が相場です。

点検・車検コストの違い

車検費用は両車とも大きな差はなく、2年ごとに10〜15万円程度が目安です。定期点検もディーラー利用で1回1〜2万円が一般的です。

GRヤリスは純正部品がスポーツ専用品のため、部品単価が高い傾向にあります。ブレーキパッドやバッテリー交換でコスト差が出ることがあります。

• GRヤリス：年間点検費用 約20,000〜30,000円
• GR86：年間点検費用 約15,000〜25,000円

タイヤ・オイル交換などの消耗品費用

GRヤリスのタイヤは18インチでハイグリップモデルが標準。1本20,000円前後の価格帯で、交換4本で80,000円を超える場合もあります。

GR86は17〜18インチで価格差があり、純正でも比較的安価なタイヤを装着しているケースが多く、4本で60,000円程度に収まることもあります。

オイルは両車ともスポーツグレード指定が多く、1回の交換で5,000〜8,000円程度が相場です。

燃費に基づく年間ガソリン代の違い

年間走行距離が10,000kmとして、平均燃費・レギュラーガソリン170円/L換算で計算すると、以下のようになります。

GRヤリスと86のおすすめユーザーは？タイプ別に徹底解説

スポーツ走行メインの人に向いているのは？

スポーツ走行やサーキット走行を本格的に楽しみたい方にはGRヤリスがおすすめです。272馬力の高出力エンジンと4WD「GR-FOUR」により、コーナリング時の安定性と加速力は非常に高いレベルにあります。

タイムアタックやラリーイベントに出場するユーザーの声でも「86では出せない速さがある」と高評価です。

普段使いとスポーツの両立をしたい人に最適なのは？

通勤や買い物などの実用性を確保しながら走りも楽しみたい方にはGRヤリスが向いています。コンパクトな5ドアハッチバックで使い勝手がよく、狭い道でも取り回ししやすいのが魅力です。

さらに、安全装備や静粛性も高水準で、日常利用での疲れにくさも考慮されています。

コスパ重視派にとってベストな選択は？

車両価格・保険・燃費・維持費を総合的に見てコストパフォーマンスを重視する方にはGR86がおすすめです。

エントリーモデルでも十分にスポーツ性が味わえ、約290万円〜という価格でFRスポーツを楽しめるのは大きな魅力です。

• GR86 SZ（6MT）：2,916,000円（税込）
• GRヤリス RS（CVT）：2,650,000円（税込）

※ただしRSグレードはスポーツ走行に不向きなため、比較対象としては86 SZが現実的です。

将来カスタム・チューニングを楽しみたい人には？

GR86は、カスタムパーツの豊富さと情報量の多さが特徴です。足回り・エアロ・吸排気系など、社外パーツが幅広く揃っており、自分好みにチューニングして楽しみたい方に人気です。

一方、GRヤリスも純正GRパーツや競技用パーツが多く出ており、モータースポーツ志向の人向けの拡張性があります。ただしコストはやや高めになります。

初心者・若者が選ぶならどちらが安心か？

運転初心者やスポーツカーが初めての若年層にはGR86が適しています。FRの挙動を学びやすく、車両感覚も掴みやすいです。また、視界も良好で、必要最低限の運転支援装備も整っています。

GRヤリスはパワーが強く、制御に注意が必要なシーンもあります。安全装備が豊富なのは利点ですが、

スポーツ走行時の挙動に慣れていない方には過剰と感じられる場合もあります。

購入前にチェックしたいライバル車種との比較

GRヤリス vs スバルWRX S4

GRヤリスとWRX S4は、いずれも4WDを搭載した高性能スポーツモデルです。GRヤリスはコンパクトで軽量な1.6Lターボ、WRX S4は2.4Lターボで全長・全幅ともに大型です。

走行性能ではGRヤリスが軽快さに優れ、WRX S4は直進安定性とパワーで優位です。価格はWRX S4が約4,510,000円〜と高めです。

86 vs マツダロードスター

FRスポーツカー同士の比較として、GR86とマツダロードスターはよく並べられます。86は2.4Lのパワフルなエンジン、ロードスターは1.5〜2.0Lで軽量なボディが魅力です。

86は安定感のあるコーナリング、ロードスターは軽快な操作性が特長です。2人乗りのロードスターに対し、86は4人乗りで実用性も考慮できます。

GRヤリスとスイフトスポーツの性能差

スズキ・スイフトスポーツは1.4Lターボを搭載した軽量スポーツモデルで、GRヤリスよりも一回り小さく、価格は約2,100,000円〜と手頃です。

ただし、加速性能や4WD制御技術、安全装備の面ではGRヤリスが圧倒しています。スイフトスポーツはライトなスポーツ走行を楽しむ方向けです。

86とシビックタイプRのキャラクターの違い

ホンダ・シビックタイプRはFF（前輪駆動）ながら、2.0Lターボで330馬力以上を誇り、GR86の235馬力を大きく上回ります。

「速さ」を追求するならタイプR、「操る楽しさ」を重視するならGR86といえます。価格もタイプRは約4,997,000円〜とプレミアムです。

価格帯が近い外車との比較（MINI JCWなど）

外車の中ではMINIジョンクーパーワークス（JCW）などがGRヤリス・GR86と同価格帯で、注目されています。JCWは2.0Lターボエンジンを搭載し、内外装の質感とブランド性が強みです。

性能面ではGRシリーズが圧倒的にスポーティですが、JCWはデザイン性や日常使いの快適さに優れています。

ただし、外車は部品代や修理費が高くなりがちな点に注意が必要です。

よくある質問（FAQ）

GRヤリスと86のどちらが保険料が高い？

保険料は車両のグレードや使用目的、運転者の年齢や等級によって大きく変わりますが、一般的にGRヤリスの方が保険料が高くなる傾向にあります。これは、GRヤリスが4WD・ターボ車であり、スポーツ性能が高いため事故リスクが高いと保険会社に判断されるからです。

20代・15等級・年1万kmの条件では、GRヤリスで年間約100,000円、GR86で約80,000円が目安です。

どちらが長く乗っても飽きない車？

ドライビングの「奥深さ」で選ぶならGR86が飽きにくい傾向にあります。FR車特有の操る楽しさがあり、走るたびに新しい発見があります。

GRヤリスは「速さ」に重点を置いたモデルなので、毎日の通勤よりも週末のドライブやサーキットでこそ真価を発揮します。日常用途での変化に乏しさを感じる可能性もあります。

初心者が乗っても問題ないのはどっち？

初心者や若年層にはGR86の方が扱いやすいです。視界が良く、パワーも適度なので運転感覚を身に付けやすいのが特徴です。加えて、6ATの設定があるためクラッチ操作に不安がある人でも安心です。

GRヤリスは高出力でトルクも太いため、アクセルワークに注意が必要です。特に雪道や雨天時の運転には注意が必要です。

GRヤリスと86で中古はどちらが狙い目？

中古車市場では、GR86の方が流通量が多く、価格選択肢も豊富です。特に初代86は200万円以下の個体も多く、予算を抑えたい方にはおすすめです。

一方、GRヤリスは流通量が少なく、人気のRZグレードはプレミア価格になることもあります。ただし、リセールバリューが高いため、長期所有後の売却でも価格が落ちにくい点はメリットです。

冬道（雪道）に強いのはどちら？

雪道走行に強いのはGRヤリスです。4WDシステム「GR-FOUR」が路面状況に応じて前後トルク配分を最適化し、滑りやすい道でも安定した走行を可能にします。

GR86はFR駆動であるため、積雪や凍結路ではスリップのリスクが高くなります。スタッドレスタイヤを履いても走行には注意が必要です。

チューニングのしやすさに差はある？

チューニングの自由度でいえば、GR86の方がユーザー支持が高いです。サスペンション、マフラー、吸気系などアフターパーツが豊富で、情報も多く流通しています。

GRヤリスもGRパーツが揃っており競技向けチューニングが可能ですが、部品価格が高く、作業も専門性が求められる傾向があります。DIY派にはGR86が取り組みやすいモデルといえます。

まとめ：GRヤリスと86の違いを理解して、自分に合った一台を選ぼう

GRヤリスとGR86は、どちらもトヨタが誇る本格スポーツモデルですが、そのキャラクターや用途には明確な違いがあります。

以下に本記事で紹介したポイントを改めて整理します。

• GRヤリスはWRC直系の4WDターボで、速さと安定性を重視したモデル
• GR86はFRレイアウトで、ドライビングの楽しさと操縦性に優れたモデル
• 維持費や燃費ではGR86の方がやや有利だが、リセールはGRヤリスが優位
• 日常使い重視ならGRヤリス、運転スキル向上や趣味性ならGR86がおすすめ

どちらが優れているかではなく、どちらが自分のライフスタイルに合うかが選択の鍵です。

安易に価格や見た目だけで決めず、試乗や情報収集を通じて、じっくりと選ぶことをおすすめします。